下野新聞 平成11年1月13日

笑顔を取り戻す子供たち

馬との生活で心を開く
なみあし学園

 上三川町東汗の「なみあし学園」は馬の世話や乗りこなしの訓練を通して、子どもの生きる力を育てる場として、1985年に開設された。これまでに巣立ったのは約80人。 全寮制が原則だが、近郊からの通園も認めており、本年度は入寮生1人、通園13人を受け入れている。

 理事長の篠崎宏司さんの本業は宇都宮工高定時制教諭。馬術競技で国体優勝の経験もあり、留学や馬術で培ったものを子どもの学校復帰に役立てようと、自宅敷地を開放。 現在はサラブレッドを中心に21頭飼育している。なみあしは馬がゆっくり歩くという意味の馬術用語。

 萩原利和園長は元陸上自衛隊三佐だが、きびきびとした動きの馬術や、自衛隊のイメージとして思い浮ぶ、命令や統制はない。「自分の意志で入園する子のみ受け入れ、退園も自由。指図や命令はせず、寝坊しても絶対に起こさない。親の過干渉や第三者の圧力を排し、自由の中から自主性や主体性を育てるのです」と、篠崎さんは言う。

 毎日の生活は午前7時起床、7時半から馬の世話をして9時に朝食。昼食を挟んで前後に乗馬の練習があるが、寮から地元の中学校や定時制高校、アルバイトに通うこともできる。馬は賢く、最初はなかなか思う通りに動かないが、愛情を持って世話をすれば、次第に園生に心を許す。500kgを超す馬が自由に動かせる自信、高い馬の背から世界を眺める優越感は、園生の大きな力となる。

 いじめが原因で小学4年から不登校を続けている宇都宮市の中学1年の女の子は、週2回の通園を始めて1か月ほどで笑顔を取り戻し、馬を早足で乗りこなすまでに上達。「最初は恐かったけど、今は気分爽快」と話し、海外で服飾デザイナーになりたいという将来の夢も語った。